オオカミ少年 -超-

だらだらと当たらない予想を書き続けていたら元号が変わっていたの儀

岡部幸雄騎手、ついに引退へ

JRA通算で歴代トップの2943勝を挙げ、「馬優先主義」「生涯ジョッキー」で鳴らした岡部幸雄騎手が、ついに現役引退を決意。柴田政人福永洋一伊藤正徳をはじめ、“花の15期生”と呼ばれた最強世代の最後の老兵も、56歳という年齢には勝てなかった。なお、今後も調教師に転身する予定はないという。



岡部騎手といえば、僕が競馬を始めた頃(中学3年生の時)には、すでに超一流ジョッキーだった。シンボリルドルフトウカイテイオービワハヤヒデという超一流馬だけでなく、タイキブリザードロイヤルタッチマグナーテンなどのGⅠレースではちょっと役不足の馬でも、先行してソツなく上位に持ってくる技術が凄かった。


有馬記念をジェニュインで惨敗した際の「風が吹くとダメ」というコメントは、当時、高校生だった僕たちの間では流行語大賞になった。タイキシャトルでのジャック・ル・マロワ賞制覇も強く印象に残っている。決して派手に勝つわけではない。それでも、確実に人気よりも上位に持ってきた。どんな展開になっても、馬の能力は出し切るジョッキーだった。





彼の数ある騎乗の中で、僕が一番印象に残ってるのは、平成13年のフェブラリーSである。岡部騎手は、前年の最優秀ダート馬ウイングアローで臨んだ。結果は残念ながらもノボトゥルーの2着に負けてしまうのだが、その過程が前代未聞。


本馬場入場の際に、重りを落とした事に気付いて、装鞍をやり直したのである。こんなハプニングは、競馬の歴史長しと言えども、聞いたことがない。もし、彼がこの異変に気付いてなければ、ウイングアロー“一番人気で失格処分”になっていた。馬券を買っていたファンは憤慨するだろうし、テレビ放送もお寒い結果になるところだった。


それを未然に防いだのは、「重りが軽い気がした」という彼の研ぎ澄まされた超一流ジョッキーの感覚だった。この時ほど、岡部騎手に対して畏敬の念を感じたことはない。これは、的場均騎手がターフを去る一週前の出来事である。

【参考資料】
岡部騎手 独占手記 (サンケイスポーツ 3月10日の記事より)